短時間労働者労働時間延長支援コースとは|年収の壁対策で最大75万円
公開日: 2026.10.27 / 更新日: 2026.10.25
短時間労働者労働時間延長支援コースとは|「年収の壁」対策として新設された助成金
短時間労働者労働時間延長支援コースとは、週の所定労働時間が短いパート・アルバイトなどの労働者を新たに社会保険に加入させるとともに、週所定労働時間の延長や賃金の増額によって収入を増やす取り組みを行った事業主に助成する、キャリアアップ助成金の1コースです。令和7年7月1日に新設されました。 いわゆる「年収の壁」を意識した就業調整(労働時間を抑えて社会保険の加入を避ける働き方)を解消し、労働者の手取りを減らさずに社会保険へ加入してもらうことを後押しする制度で、旧「社会保険適用時処遇改善コース」の労働時間延長メニューを見直して作られました。 助成額は、1年目の取り組みで最大50万円、2年目にさらに取り組みを続けると追加で最大25万円、あわせて労働者1人につき最大75万円まで支給されます。ただし、企業規模や延長時間・賃金増額の幅によって金額は変わります。まずは1年目の助成額から見ていきます。
助成額①1年目の取り組み|延長幅で変わる最大50万円
1年目の助成額は、週所定労働時間をどれだけ延長したか、延長幅に応じて必要な賃金増額の有無によって決まります。 > 週所定労働時間を5時間以上延長:賃金増額の要件なし > 週所定労働時間を4時間以上5時間未満延長:賃金5%以上増額 > 週所定労働時間を3時間以上4時間未満延長:賃金10%以上増額 > 週所定労働時間を2時間以上3時間未満延長:賃金15%以上増額 これらの要件を満たした場合の1人当たり助成額は、企業規模によって次のように分かれます。 > 小規模企業(常時雇用労働者30人以下):50万円 > 中小企業:40万円 > 大企業:30万円 💡 週所定労働時間の延長を複数年かけて段階的に行い、社会保険に加入する場合も対象になります。1年で一気に5時間延ばす必要はありません。
助成額②2年目の取り組み|さらに延長・増額すると追加25万円で最大75万円
2年目の取り組みを行うと、1年目の助成額に加えてさらに助成を受けられます。2年目の助成額は、1年目の取り組み内容と、その実施後(2年目)を比較して判定します。 > 週所定労働時間をさらに2時間以上延長する > または、基本給をさらに5%以上増加させる、もしくは昇給・賞与・退職金制度のいずれかを新たに適用する このいずれかを満たした場合の1人当たり助成額は次のとおりです。 > 小規模企業:25万円 > 中小企業:20万円 > 大企業:15万円 小規模企業の場合、1年目の50万円と2年目の25万円を合わせると、労働者1人につき最大75万円の助成になります。「最大75万円」という金額は、1年目だけで届く数字ではなく、2年間の取り組みを通じて到達する上限である点に注意が必要です。
対象になる労働者の要件|継続雇用期間と過去の社会保険加入歴がポイント
助成の対象になる労働者は、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。 1. 週所定労働時間の延長等をした日、または新たに社会保険の被保険者となった日のいずれか早い方の前日から起算して6か月前の日から、継続して支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること(複数年かけて延長する場合は、最初に延長した日を基準にする) 2. 新たに社会保険が適用される日の前日から起算して1か月前の日から3か月が経過するまでの間に、週所定労働時間を5時間以上延長する、または2時間以上5時間未満延長したうえで基本給を増額する取り組みが行われ、新たに社会保険の被保険者要件を満たすこととなった者であること 3. 社会保険の適用日の前日から起算して過去6か月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であり、かつ支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者であること 4. 週所定労働時間の延長等を行った事業所の事業主、または取締役の3親等以内の親族以外の者であること 5. 支給申請日において離職していない者であること(本人都合の離職や天災等やむを得ない理由による離職、本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く) 💡 社会保険の被保険者要件は、フルタイム従業員の週所定労働時間・月所定労働日数の3/4以上であること、または従業員51人以上の企業等では週20時間以上かつ所定内賃金が月額8.8万円以上(学生を除く)であることなどで判定します。従業員50人以下の企業等は、労使合意によって短時間労働者が社会保険に加入する事業所になることもできます。
対象になる事業主の要件|賃金を減らさない・雇用契約書で明確にする
事業主側にも、次のような要件があります(最後の1つは2年目の取り組みを行う場合のみ)。 1. 新たに社会保険の被保険者とした対象労働者を、各支給対象期の期間以上継続して雇用し、賃金を支給していること 2. 基本給や定額で支給される諸手当を、合理的な理由なく減額していないこと(比較する期間は、1年目のみの取り組みか、複数年かけた取り組みか、2年目の取り組みかによって異なる) 3. 対象労働者を、社会保険の被保険者要件を満たした日以降のすべての期間、雇用保険および社会保険の被保険者として適用させていること 4. 週所定労働時間および社会保険加入状況を明確にした雇用契約書等を作成・交付していること 5. 旧「社会保険適用時処遇改善コース」の併用メニュー(3期目)または労働時間延長メニューから切り替える場合は、その対象労働者について旧メニューの支給申請がまだ提出されていないこと 6. 対象労働者の週所定労働時間を5時間以上、または2時間以上5時間未満延長するとともに基本給を増額していること 7. 社会保険の適用拡大・基本給の増額・労働時間の延長等によって、対象労働者が新たに社会保険の被保険者要件を満たし、適用日の1か月前の日から3か月が経過する日の前日までの間に6の措置を講じていること 8. (2年目の取り組みを行う場合)6の取り組み後、第2期支給対象期の開始日までに、週所定労働時間を2時間以上延長する、基本給を5%以上増額する、昇給・賞与・退職金制度のいずれかを新たに適用する、のいずれかの措置を講じていること とくに2の「減額していないこと」は見落としやすい要件です。延長で労働時間を増やした分だけ時給単価を下げる、といった対応をすると、この要件を満たせなくなります。
申請の流れとスケジュール|計画書の提出期限と支給申請までの日数
申請の基本的な流れは、計画書の提出と支給申請の2段階です。 > ① キャリアアップ計画書を、コース実施の前日までに都道府県労働局へ提出する(本コースの場合、社会保険加入日の前日まで。たとえば令和8年10月1日に加入させる場合は、同年9月30日までに提出が必要) > ② 取り組みを6か月間継続したあと、支給対象期分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に支給申請する 旧「社会保険適用時処遇改善コース」の計画届をすでに提出している場合は、本コースの計画届・変更届を改めて提出する必要はありません。 2年目まで取り組む場合は、1年目(第1期支給対象期)の6か月分を申請したあと、2年目(第2期支給対象期)の6か月分についても、同じく賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請します。複数年かけて週所定労働時間の延長等に取り組む場合も、キャリアアップ計画期間内であれば対象になります。
必要書類|支給申請書・労働条件通知書・賃金台帳など
支給申請の際に必要になる主な書類は、次のとおりです。 - キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号) - 短時間労働者労働時間延長支援コース内訳(様式第3号・別添様式6) - 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号) - 支払方法・受取人住所届(未登録または振込口座変更の場合) - 対象労働者の雇用契約書または労働条件通知書等の写し - 対象労働者の賃金台帳等の写し - 対象労働者の出勤簿またはタイムカード等の写し(賃金台帳等で出勤日数・労働時間数が確認できない場合) - 2年目の取り組みで昇給・賞与・退職金制度を新たに適用した場合は、その適用前後の就業規則・労働協約・賃金規程等および賃金台帳 - 常時雇用する労働者の数で小規模企業・中小企業であることを証明する場合は、事業所確認票(様式第4号) 💡 支給要件確認申立書は、複数の確認項目のうち1つでも「いいえ」があると助成金を受けられません。提出前に自社の状況と照らし合わせておくと安心です。
旧コースからの切替と複数年の取り組み|社会保険適用時処遇改善コースとの関係
短時間労働者労働時間延長支援コースは、旧「社会保険適用時処遇改善コース」の労働時間延長メニューを見直して新設されたコースです。 旧コースの併用メニュー(3期目)または労働時間延長メニューの取り組みをすでに進めていた場合でも、本コースの要件を満たしていれば、本コースへ切り替えて申請できます。ただし、切替の対象になるのは、その対象労働者について旧メニューの支給申請がまだ提出されていない場合に限られます。すでに旧メニューで支給申請を済ませている労働者について、重ねて本コースを申請することはできません。 自社がすでに旧コースのキャリアアップ計画届を提出している場合は、本コースのために計画届・変更届を改めて提出する必要はありません。どちらのコースで取り組みを進めているか、労働者ごとに整理しておくと、切替の判断がしやすくなります。
まとめ|何から準備すればよいか
短時間労働者労働時間延長支援コースは、短時間労働者の週所定労働時間を延長して社会保険に加入してもらう取り組みに対し、1年目で最大50万円、2年目まで取り組めばさらに最大25万円、あわせて労働者1人につき最大75万円を助成する制度です。 金額だけを見ると単純そうですが、実際には企業規模(小規模企業・中小企業・大企業)によって助成額が変わり、対象労働者には継続雇用期間や過去の社会保険加入歴の要件があり、事業主側にも賃金を不当に減額しないことなど複数の要件があります。キャリアアップ計画書の提出期限は社会保険加入日の前日までと早いため、延長の取り組みを始める前に、対象労働者の要件と提出スケジュールを確認しておくことが欠かせません。 短時間労働者労働時間延長支援コースだけに目を向けると、キャリアアップ助成金の他コースや、人材確保・定着に使える関連の助成金との組み合わせを見落とすこともあります。/browse.htmlで目的や業種から関連する補助金・助成金もあわせて確認しておきたいところです。
参考情報
事業主の皆さまへ「短時間労働者労働時間延長支援コース」を活用しませんか?(リーフレット・令和8年4月版)|厚生労働省 — 公式情報を見る
キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース(パンフレット・令和8年4月1日版 PL080401 No.13)|厚生労働省 — 公式情報を見る
キャリアアップ助成金|厚生労働省 — 公式情報を見る
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