雇用調整助成金とは|対象条件と助成率・計画届の手続きを解説
公開日: 2026.10.05
雇用調整助成金とは何を支援する制度か|休業・教育訓練・出向で雇用を維持する
雇用調整助成金とは、景気の変動や産業構造の変化といった経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せずに雇用を維持した場合に使える助成金です。厚生労働省が所管し、都道府県労働局やハローワークが窓口となって運営しています。労使間の協定に基づいて休業・教育訓練・出向のいずれかを実施し、その間に支払った休業手当や教育訓練の賃金に相当する額の一部を助成する仕組みです。売上が一時的に落ち込んだときに人員整理へ踏み切る前の選択肢として、雇用を維持したまま事業の立て直しに時間を使えるようにすることが本来の目的です。
対象になる事業主の条件|売上高10%減少と雇用量要件をあわせて満たす
対象になるのは、最近3か月間の売上高または生産量などの月平均値が、前年同期と比べて10%以上減少している事業主です。ただし、雇用保険の適用事業所を設置してから1年未満の事業所は、前年同期と比較できないため対象になりません。売上の減少だけでは足りず、雇用量要件もあわせて満たす必要があります。最近3か月間の雇用保険被保険者数と受け入れている派遣労働者数の月平均値が、前年同期と比べて大企業は5%を超えてかつ6名以上、中小企業は10%を超えてかつ4名以上増えていないことが条件です。 💡 売上が落ち込んでいても、同じ時期に人を大きく増やしていると雇用量要件を満たせず対象外になる場合があります。休業等を検討する前に、直近の在籍者数の動きも確認しておくことが欠かせません。
助成の対象になる休業・教育訓練・出向の内容
助成の対象になる休業は、労使間の協定に基づいて所定労働日の所定労働時間内に実施するもので、1日の中の一部だけを休む短時間休業の場合は1時間以上であることが条件です。教育訓練は、職業に関する知識・技能・技術を習得または向上させる目的で、所定労働日の所定労働時間内に実施するもの(短時間訓練は2時間以上)が対象になります。出向は、3か月以上1年以内に出向元の事業所へ復帰することが前提で、出向先事業所での労働条件の明確化や、出向元・出向先での賃金負担の取り決めが必要です。対象労働者は、雇用保険に加入してから6か月以上経過している人に限られ、過去に受給した判定基礎期間の末日の翌日から1年を超えていることも条件になります。
助成率と1人1日当たりの上限額|中小企業2/3・大企業1/2、上限9,110円
休業や教育訓練を実施した場合の助成額は、事業主が労働者に支払った休業手当または教育訓練時の賃金に相当する額に、助成率を乗じて算定します。助成率は中小企業が2/3、大企業が1/2です。ただし、1人1日当たりの上限額が設けられており、雇用保険の基本手当日額の最高額を基準に、令和8年8月1日時点で9,110円が上限です。この上限額は雇用保険の基本手当日額の見直しにあわせて変わることがあるため、申請時点の最新額を厚生労働省のサイトで確認しておくと安心です。
教育訓練を行った場合の加算と残業相殺の仕組み
教育訓練を実施した場合は、休業手当等に相当する助成額に加えて、訓練費として1人1日当たり1,200円が加算されます。判定基礎期間における教育訓練の実施率が20%以上まで高まると、加算額は1人1日当たり1,800円に上がります。一方で、休業等をさせた労働者に残業や休日出勤をさせた場合は、その分だけ助成対象の日数が減る『残業相殺』という仕組みがあります。休業等をさせる一方で所定外労働等をさせると、新たに働かせる必要性が生じたとみなされ、その所定外労働等に相当する時間分を休業等延日数から差し引くというものです。休業を計画する際は、同じ期間に残業や休日出勤が発生しないよう調整しておくことが、助成額を減らさないための実務上のポイントになります。
受給できる期間|1年で最大100日、3年で最大150日
雇用調整助成金が受給できる日数には上限があります。1年間の対象期間内では最大100日まで、過去に受給した経験がある場合は、通算して3年間で最大150日までという限度が設けられています。事業の縮小が長期化しそうな場合でも、この上限日数を踏まえて休業と通常稼働を組み合わせる計画を立てる必要があります。限度日数に近づいてきた段階で、教育訓練や出向への切り替えも含めて、雇用維持の方法を見直すタイミングを事前に検討しておくとよいでしょう。
申請の流れと計画届の提出タイミング|事前提出がなければ助成対象外
受給の手続きは、雇用調整の計画を検討し、計画届を提出し、実際に休業等を実施し、支給申請を行い、労働局の審査を経て支給が決定され、最後に支給額が振り込まれるという流れで進みます。計画届や支給申請の提出・受付窓口は、原則として都道府県労働局ですが、ハローワークで書類を受け付ける場合もあります。 > 計画届は支給対象期間ごとに提出する必要があり、提出期限は休業等を開始する日の前日までです。初めて届け出る場合は、休業等の初日の2週間前までをめどに提出することが案内されています。この事前提出がなかった休業等は、雇用調整助成金の支給対象になりません。休業を決めてから慌てて準備を始めると、計画届の提出期限に間に合わないことがあります。
出向を行った場合の助成額と不支給になるケース
出向を行った場合の助成額は、出向元の事業主が出向労働者の賃金に対して負担する額に助成率を乗じて算定します。負担額は出向前の通常賃金の概ね1/2を上限とし、助成率は休業等と同じく中小企業2/3、大企業1/2です。1人1日当たりの上限は、雇用保険の基本手当日額の最高額に330/365を乗じ、さらに支給対象期の日数を乗じた額です。 なお、労働保険料の滞納がある事業主、支給申請日の前日から過去1年以内に労働関係法令違反で送検処分を受けた事業主、暴力団関係者、倒産している事業主、支給申請書類に事実と異なる記載をした事業主などは、要件を満たしていても支給を受けられません。休業等を始める前に、自社がこうした不支給要件に当てはまらないかも確認しておく必要があります。
まとめ|雇用調整助成金が使えるか確認し、ほかの支援制度もKANAEで探す
雇用調整助成金は、売上高10%以上の減少という生産量要件と、雇用量要件をあわせて満たす事業主が、休業・教育訓練・出向を通じて雇用を維持した場合に、助成率2/3(中小企業)または1/2(大企業)で助成を受けられる制度です。助成額には1人1日当たり9,110円という上限があり、教育訓練を行えばさらに加算されますが、休業等を始める前に計画届を提出していなければ、その休業等自体が助成対象外になります。自社の売上や雇用の状況を確認せずに休業を始めてしまうと、あとから要件を満たせないことに気づく場合があります。雇用調整助成金が自社に合うか、ほかにも使える補助金・助成金がないかを整理したいときは、KANAEの検索で目的や業種から確認してみてください。
参考情報
雇用調整助成金|厚生労働省 — 公式情報を見る
雇用調整助成金ガイドブック(令和8年4月1日現在・厚生労働省公式PDF) — 公式情報を見る
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