業務改善助成金とは|最大600万円の助成額とコースを解説
公開日: 2026.10.05
業務改善助成金は何を支援する制度か|賃金引上げと設備投資をセットで助成
業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げながら、生産性向上につながる設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に対して、その費用の一部を助成する制度です。厚生労働省が所管し、都道府県労働局が窓口となって運営しています。賃金引上げの計画と設備投資等の計画をあらかじめ立てて申請し、労働局の交付決定を受けたあとに計画どおり実施し、事業実績を報告することで助成金が支給される流れです。もっとも大きな助成額は600万円で、引き上げる賃金の幅や対象になる労働者数によって上限額が変わります。
対象になる事業者の条件|中小企業・小規模事業者で地域別最低賃金未満であること
対象になるのは、中小企業・小規模事業者であり、大企業と密接な関係を持つ『みなし大企業』に該当しない事業者です。あわせて、申請する事業場の事業場内最低賃金が、令和8年度の地域別最低賃金(都道府県ごとに定められ、例年10月以降に改定される最低賃金額)未満であること、解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がないことも要件になります。申請は、工場や事務所など労働者がいる事業所ごとに行う必要があり、複数の事業所を持つ事業者は、事業所ごとに別々の賃金引上げ計画・設備投資計画を立てて申請します。
50円・70円・90円の3コースと助成率|事業場内最低賃金で4/5か3/4が決まる
業務改善助成金には、事業場内最低賃金の引上げ額に応じて50円コース・70円コース・90円コースの3つがあります。どのコースも、雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を、コースで定めた額以上引き上げることが条件です。助成率は申請時点の事業場内最低賃金によって決まり、1,050円未満の事業場は4/5、1,050円以上の事業場は3/4です。引き上げる対象労働者には、事業場内最低賃金である労働者本人のほか、その引上げによって賃金額を追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上の引上げを行っていれば含めることができます。
助成上限額の仕組み|引き上げる労働者数とコースで最大600万円まで変わる
助成上限額は、コース(50円・70円・90円)と、引き上げる労働者数の組み合わせで決まります。もっとも上限額が大きいのは90円コースで、引き上げる労働者数が10人以上(特例事業者のみ対象)の場合に最大600万円です。同じ90円コースでも、6〜7人であれば360万円、8人以上であれば450万円が上限額になります。50円コース・70円コースはこれより低い上限額が設定されており、たとえば70円コースの8人以上では230万円、50円コースの8人以上では110万円です。 💡 引き上げる労働者数が1人・2〜3人の区分では、事業者の規模区分によって上限額が一部異なります。自社がどちらの区分に当たるかは、公募要領の表で確認してください。
対象になる設備投資等の経費|POSレジや経営コンサルティングは対象、通常はPC等は対象外
対象になる設備投資等の経費には、POSレジシステムの導入による在庫管理の効率化、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮といった機器・設備の導入費、国家資格者による業務フロー見直しなどの経営コンサルティング費、顧客管理情報のシステム化といったその他の経費が含まれます。通常は、パソコン・スマートフォン・タブレット等の端末や周辺機器の新規導入は対象外ですが、原材料費の高騰など外的要因により利益率が低下している特例事業者に限り、これらの端末の新規導入も対象経費として認められる特例があります。
助成額の計算方法|設備投資額×助成率と上限額の低い方が支給される
助成される金額は、設備投資等にかかった費用に助成率をかけた金額と、助成上限額とを比較し、どちらか低い方の金額になります。公式資料の計算例では、事業場内最低賃金が1,040円の事業場が8人の労働者を1,130円まで引き上げる90円コースを申請し、設備投資額が600万円だった場合、助成率4/5をかけた480万円と、90円コース・8人以上の上限額である450万円を比べて、低い方の450万円が支給されるとされています。設備投資の計画を立てる際は、助成率をかけた金額が上限額を超える可能性があることを踏まえ、上限額に収まる範囲で計画を立てるかどうかも検討材料になります。
特例事業者とは|賃金要件と物価高騰等要件のどちらかに当てはまる事業者
特例事業者に当てはまるのは、次の2つの要件のいずれかを満たす事業者です。1つは、申請する事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満である『賃金要件』。もう1つは、原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均の利益率が前年度と比べて3%ポイント以上低下している『物価高騰等要件』です。賃金要件を満たす事業者は、助成上限額が一部の区分でより高く設定され、物価高騰等要件を満たす事業者は、助成上限額の優遇に加えて、パソコン等の新規導入が対象経費になる特例も受けられます。自社がどちらかの要件に当たるかどうかは、賃金台帳や損益の資料をもとに確認しておくと、申請の準備がスムーズになります。
申請期間と賃金引上げのタイミングの注意点|発効日前日までに引き上げる必要がある
令和8年度の申請期間は、2026年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日までです。賃金引上げ期間も同じく2026年9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日までで、事業の完了期限は交付決定を受けた年度の1月31日です。地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げを完了し、引上げ後の賃金額を就業規則等に定めておく必要があります。複数回に分けての引上げは認められておらず、対象になる労働者は週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者に限られる点も、計画を立てる際の注意点です。 > 地域別最低賃金は都道府県ごとに発効日が異なります。自社の都道府県の発効日を早めに確認し、発効日の前日までに賃金引上げと交付申請を完了させる段取りを組むことが欠かせません。
まとめ|自社に合う助成額を確認し、ほかの支援制度もKANAEで探す
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円・70円・90円のいずれかのコースで引き上げながら設備投資等を行う中小企業・小規模事業者を対象に、最大600万円を助成率4/5または3/4で支援する制度です。助成上限額はコースと引き上げる労働者数の組み合わせで決まり、特例事業者に当てはまるかどうかで優遇の有無も変わるため、申請前に自社の区分を公募要領の表で確認することが欠かせません。賃金引上げのタイミングや対象経費の条件を確認せずに計画を立てると、交付申請の段階で要件を満たせないことがあります。業務改善助成金が自社に合うか、ほかにも使える補助金・助成金がないかを整理したいときは、KANAEの検索で目的や業種から確認してみてください。
参考情報
業務改善助成金|厚生労働省 — 公式情報を見る
令和8年度業務改善助成金のご案内(厚生労働省公式PDF) — 公式情報を見る
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