キャリアアップ助成金とは|賃金規定等共通化コースの支給額60万円と対象条件を解説
公開日: 2026.10.14
キャリアアップ助成金とは|賃金規定等共通化コースの位置づけと基本の考え方
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員転換や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する、厚生労働省の制度です。正社員化コース・障害者正社員化コース・賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コース・賞与・退職金制度導入コース・短時間労働者労働時間延長支援コースの6コースで構成されており、このうち賃金規定等共通化コースは、就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用するすべての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されるコースです。 ここでいう「共通化」とは、単に時給を引き上げることではありません。正社員と同じ等級・号俸の仕組みに有期雇用労働者等を組み込み、同じ基準で賃金が決まる状態をつくることを指します。賃金規定等改定コースや正社員化コースとは異なる、賃金テーブルそのものの設計に関わるコースだと考えるとわかりやすくなります。
対象になる事業主の条件|全コース共通の5要件とコース固有の8要件
全コース共通の対象事業主の要件は、雇用保険適用事業所の事業主であること、雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置いていること、対象労働者に係る「キャリアアップ計画」を作成し管轄の労働局長に提出していること、対象労働者の労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備していること、キャリアアップ計画の期間内に実際にキャリアアップへ取り組んだことです。 賃金規定等共通化コース固有の要件としては、正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに設けて適用していること、正規雇用労働者側の賃金規定等を有期雇用労働者等側と同時またはそれ以前に導入していること、賃金規定等の区分を双方でそれぞれ3区分以上設けて共通する区分を2区分以上設けていること、共通化した区分に有期雇用労働者等1人以上と正規雇用労働者1人以上を格付けして適用していること、有期雇用労働者等の格付け後の区分における時給換算額を正規雇用労働者の同等区分の時給換算額以上にしていること、合理的な適用条件を就業規則等に明示していること、すべての対象者に規定を適用していること、6か月以上運用していること、適用前と比べて基本給や定額の諸手当を減額していないことが必要です。 次のいずれかに該当する事業主は受給できません。 - 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主 - 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主 - 性風俗関連営業等またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主、暴力団と関わりのある事業主 - 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
支給額|1事業所当たり中小企業60万円・大企業45万円
賃金規定等共通化コースの支給額は、対象労働者の人数にかかわらず1事業所当たりの金額で決まります。中小企業事業主は60万円、大企業は45万円で、いずれも1事業所当たり1回のみの支給です。正社員化コースのように対象者数に応じて加算される仕組みではなく、賃金規定等を共通化する取組そのものに対して一度だけ助成される点が特徴です。 💡 中小企業事業主の範囲は、小売業(飲食店を含む)が資本金5,000万円以下または常時雇用労働者50人以下、サービス業が資本金5,000万円以下または100人以下、卸売業が資本金1億円以下または100人以下、その他の業種が資本金3億円以下または300人以下です。資本金等のない事業主は常時雇用する労働者の数で判定します。どちらか一方の基準を満たせば中小企業として扱われます。
等級の格付けと時給換算比較|共通化の実務でつまずきやすいポイント
共通化した賃金規定等では、正規雇用労働者の等級(等級の下に号俸がある場合は号俸)と、有期雇用労働者等の時給が1対1で対応している必要があります。比較の方法は、正規雇用労働者の月給を、その労働者の1日の所定労働時間×月平均労働日数(週の所定労働日数×52÷12)で割って時給換算し、その額が有期雇用労働者等の時給以下になっているかで確認します。 さらに、各等級には「企画・監督」「判断・指導」「定型熟練」「一般定型」「定型補助」のように、職務に応じた合理的な適用条件を就業規則または労働協約に明示しておく必要があります。等級の呼び方や区分数は企業によって異なってよいものの、正規雇用労働者と有期雇用労働者等でそれぞれ3区分以上、かつ共通する区分を2区分以上設けるという最低ラインは必ず満たさなければなりません。この等級設計を先に固めておかないと、申請段階で要件を満たせていないことに気づくケースがあります。
申請までの流れと申請期間|6か月分の賃金支払い後2か月以内が期限
賃金規定等共通化コースの標準的な流れは、次のとおりです。 1. 各コースの実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、管轄の労働局長に提出する 2. 就業規則または労働協約に共通の賃金規定等を定め、対象労働者に適用する 3. 共通化した賃金規定等を6か月以上運用し、対象労働者へ賃金規定等共通化後6か月分の賃金を支払う 4. 支払った日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行う > 時間外手当を実績に応じて基本給等とは別に翌月以降に支給している場合は、6か月分の時間外手当が支給される日を基準にします。また、勤務をした日数が11日未満の月は6か月分の算定から除かれます(有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなします)。申請期限は「共通化を適用した日」ではなく「6か月分の賃金を支払った日の翌日」から数える点を取り違えないようにしてください。 支給申請書および添付書類は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。GビズIDを取得すれば、電子申請で届出・申請を行うこともできます。
対象外になるケース・見落としやすい注意点
同一の行為等を対象として2つ以上の助成金等が申請された場合、一方しか支給されないことがあります(併給調整)。また、年度の途中で助成金制度の要件等が変更になる場合があるため、取組を実施する際は最新の要件等について事前に管轄の労働局またはハローワークへ問い合わせることが案内されています。 労働者の処遇改善が図られていない、あるいは非正規雇用労働者の処遇低下につながっている場合など、助成金の趣旨・目的に沿った取組と判断されないときは不支給となります。偽りその他不正行為により本来受けることのできない助成金を受け、または受けようとした場合、助成金は不支給または支給取消しとなり、返還額に加えて年3%の延滞金、返還額の20%の違約金が請求されるほか、原則として5年間は雇用関係助成金を受給できなくなります。制度の趣旨に沿わない形式的な共通化は、助成金の対象にならないと考えておく必要があります。
まとめ|賃金規定等共通化コースを知り、ほかの制度もKANAEで探す
賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等に正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに作成し適用した事業主に対し、1事業所当たり中小企業60万円・大企業45万円(いずれも1回のみ)を助成する制度です。共通化した区分への格付けと時給換算の比較を正しく行い、共通化後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に申請する必要があります。 等級設計や時給換算の確認を自己判断だけで進めると、要件を満たせていないまま取組を進めてしまうことがあります。申請を検討する段階で、管轄の労働局・ハローワークや社会保険労務士に相談しておくと安心です。雇用に関する助成金は、賃金規定等共通化コース以外にも複数存在します。他の制度もあわせて確認したい場合は、KANAEの検索で目的や業種から探してみてください。
参考情報
キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版・令和8年4月8日時点)|厚生労働省 — 公式情報を見る
キャリアアップ助成金|厚生労働省 — 公式情報を見る
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