キャリアアップ助成金とは|賃金規定等改定コースの支給額表と対象条件を解説
公開日: 2026.10.21
キャリアアップ助成金とは|賃金規定等改定コースの位置づけと「3%以上増額改定」の意味
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員転換や処遇改善の取組を実施した事業主に助成する、厚生労働省の制度です。正社員化コース・障害者正社員化コース・賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コース・賞与・退職金制度導入コース・短時間労働者労働時間延長支援コースの6コースで構成されており、このうち賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を実際に適用させた場合に助成されるコースです。 ここでの「賃金規定等」は、就業規則や労働協約において賃金額を定めたものを指し、賃金規定・賃金一覧表等の形で規定されていれば対象になります。既存の賃金規定等を改定する場合だけでなく、新たに賃金規定等を作成した場合でも、その内容が対象労働者の過去3か月の賃金の支給実態と比較して3%以上増額していることが確認できれば、助成対象になります。
支給額|引き上げ率に応じた1人当たりの助成額
賃金規定等改定コースの支給額は、対象労働者1人当たりの賃金引き上げ率に応じて4段階に分かれています。 - 3%以上4%未満:中小企業4万円・大企業2.6万円 - 4%以上5%未満:中小企業5万円・大企業3.3万円 - 5%以上6%未満:中小企業6.5万円・大企業4.3万円 - 6%以上:中小企業7万円・大企業4.6万円 💡 1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は100人です。申請を取り下げた場合はこの上限人数に含まれません(ただし、同一の取組による申請は対象外です)。
加算額|職務評価加算と昇給制度加算
賃金規定等改定コースには、1事業所当たり1回のみの加算措置が2種類あります。 - 職務評価の手法を活用して賃金規定等を増額改定した場合:20万円(大企業15万円) - 有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合:20万円(大企業15万円) ここでの「職務評価」とは、職務の大きさを相対的に比較し、その職務に従事する労働者の待遇が職務の大きさに応じたものとなっているかの現状を把握することです。職務評価加算を申請する場合は、賃金規定等の改定前に職務評価を実施し、その結果を改定に反映していることが必要です。
対象になる事業主の条件|全コース共通の7要件とコース固有の6要件
全コース共通の要件として、次のいずれかに該当する事業主は、この助成金を受給できません。 - 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主 - 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主 - 性風俗関連営業・接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主 - 暴力団と関わりのある事業主 - 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主 - 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主 - 支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない事業主 賃金規定等改定コース固有の対象事業主の要件は、①有期雇用労働者等に適用される賃金規定等を作成していること、②賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定に属する有期雇用労働者等に適用させたこと(新たに賃金規定等を整備する場合を含む)、③増額改定前の賃金規定等を3か月以上運用していたこと(新たに整備する場合は整備前3か月分の賃金支払状況が確認できること)、④増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、対象労働者の諸手当を減額していないことです。職務評価加算を受ける場合は⑤有期雇用労働者等と正規雇用労働者を対象に職務評価を実施していること、昇給制度加算を受ける場合は⑥雇用するすべての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定していることが、それぞれ追加で必要です。
対象となる労働者の条件|継続雇用期間と3%以上昇給の要件
対象労働者は、次のすべてに該当する必要があります。①賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月以上前の日から、増額改定後6か月以上の期間継続して支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること(勤務した日数が11日未満の月は除きますが、有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなします)、②就業規則または労働協約の定めるところにより増額改定した賃金規定等を適用され、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給していること(最低賃金の効力が生じた日以降に賃金規定等を増額した場合、当該最低賃金に達するまでの増額分は含めません)、③賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていないこと、④増額改定した日以降の6か月間、当該事業所において雇用保険被保険者であること、⑤賃金規定等の増額改定を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること、⑥支給申請日において離職していない者であることです。 事業所のすべての対象労働者を一度に改定する必要はなく、雇用形態別や職種別など合理的な理由に基づく区分であれば、一部の労働者を対象として改定・昇給させた場合も助成対象になります。
既存規定を改定する場合の注意点|すべての等級を増額改定する必要性
見落としやすいのが、既存の賃金規定等を改定する場合の「全等級増額」の要件です。既存の賃金規定等を改定するときは、実際に対象労働者が位置づけられていない等級も含め、すべての等級の金額を3%以上増額改定していることが必要です。賃金引き上げ率が等級によって混在している場合でも、合理的な理由に基づき区分されていれば一部の上位区分だけの増額改定として認められることがありますが、根拠のない区分での一部改定は認められません。 > 一方、新たに賃金一覧表等を作成して取り組む場合は、対象労働者の過去3か月の賃金の支給実態と比較して3%以上増額していることが確認できれば助成対象になります。既存規定の改定か新規作成かで、増額改定の対象範囲の考え方が異なる点に注意してください。
申請までの流れと申請期間|改定後6か月分の賃金支払い後2か月以内が期限
賃金規定等改定コースの標準的な流れは、次のとおりです。 1. 賃金規定等の増額改定日(改定後の規定を適用した日)の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、管轄の労働局長に提出する 2. 就業規則または労働協約に、3%以上増額改定した賃金規定等を定め、対象の有期雇用労働者等に適用する 3. 増額改定後の賃金規定等に基づき、対象労働者に6か月分の賃金を支給する 4. 増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内に支給申請を行う 💡 就業規則等の規定により、時間外手当を実績に応じて基本給等とは別に翌月等に支給している場合は、6か月分の時間外手当が支給される日を基準にします。また、賃金規定等の改定日が賃金締切日の翌日でない場合は、改定日以降の最初の賃金締切日後6か月分で数えます。申請期限は「改定した日」ではなく「改定後6か月分の賃金を支払った日の翌日」から数える点を取り違えないようにしてください。 中小企業事業主の範囲は、小売業(飲食店を含む)が資本金5,000万円以下または常時雇用労働者50人以下、サービス業が資本金5,000万円以下または100人以下、卸売業が資本金1億円以下または100人以下、その他の業種が資本金3億円以下または300人以下で、どちらか一方の基準を満たせば中小企業として扱われます。
対象外になるケース・見落としやすい注意点
同一の行為等を対象として2つ以上の助成金等が申請された場合、一方しか支給されないことがあります(併給調整)。労働者の処遇改善が図られていない、あるいは非正規雇用労働者の処遇低下につながっている場合など、助成金の趣旨・目的に沿った取組と判断されないときは不支給となります。 偽りその他不正行為により本来受けることのできない助成金を受け、または受けようとした場合、助成金は不支給または支給取消しとなり、返還額に加えて年3%の延滞金、返還額の20%の違約金が請求されるほか、原則として5年間は雇用関係助成金を受給できなくなります。年度の途中で助成金制度の要件等が変更になる場合もあるため、取組を実施する前に管轄の労働局またはハローワークへ最新の要件を確認しておくと安心です。
まとめ|賃金規定等改定コースを知り、ほかの制度もKANAEで探す
賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定等を3%以上増額改定し、実際に適用させた事業主に対し、引き上げ率に応じて中小企業4万円から7万円(大企業2.6万円から4.6万円)を助成する制度です。職務評価加算や昇給制度加算を活用すれば、1事業所当たりさらに20万円(大企業15万円)ずつの加算も受けられます。 既存の賃金規定等を改定する場合は、対象労働者が位置づけられていない等級も含めてすべての等級を増額改定する必要がある点、申請期限が「改定後6か月分の賃金を支払った日の翌日」から数える点は、特に見落とされやすい基準です。申請を検討する段階で、管轄の労働局・ハローワークや社会保険労務士に相談しておくと安心です。雇用に関する助成金は、賃金規定等改定コース以外にも複数存在します。他の制度もあわせて確認したい場合は、KANAEの検索で目的や業種から探してみてください。
参考情報
キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版・令和8年4月8日時点)|厚生労働省 — 公式情報を見る
キャリアアップ助成金|厚生労働省 — 公式情報を見る
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